米国債は、日本人投資家にとっても魅力的な投資対象です。しかし、どの種類の債権が最適かは、投資目的やリスク許容度によって異なります。今回は、29年間の長期保有を前提に通常の米国債とゼロクーポン債の特徴、メリット、デメリット、そして投資に伴うリスクについて詳しく解説します。
通常の米国債VS.ゼロクーポン債
米国通常債券
- 利率:4.125%
- 参考単価:96.40ドル
- 利回り4.343%
ゼロクーポン債
- 利率0.000%
- 参考単価29.73ドル
- 利回り:4.240%
メリットとデメリットの比較
通常の米国債のメリット
- 定期的な利子収入:定期的に利子が支払われるため、安定したキャッシュフローが得られます。
- 流動性:市場での取引が活発で、比較的簡単に売却できます。
通常米国債のデメリット
- 再投資リスク:利子を再投資する際の市場金利次第で、再投資の利回りが低下するリスクがあります。
- 為替リスク:円高になると利子収入と元本償還の価値が目減りします。
ゼロクーポン債のメリット
- 予想可能なリターン:購入時の価格と償還時の価格が確定しており、予想可能なリターンが得られます。
- 低い購入コスト:購入価格が低いため、初期投資額を抑えることができます。
- 再投資リスクの回避:利子が支払われないため、再投資のリスクがありません。
ゼロクーポン債のデメリット
- 流動性リスク:長期保有が前提のため、中途売却時に流動性が低い場合があります。
- 金利リスク:金利変動に対する価格変動が大きくなるため、金利リスクが高くなります。
為替レートの影響
米国通常債券とゼロクーポン債を保有した場合、為替レートの変動がどのように影響するかをシュミレーションしてみます。
為替レートを1ドル=150円と仮定
米国通常債券
- 購入価格:96.40ドル
- 円建ての購入価格:14,460円
ゼロクーポン債
- 購入価格:29.73ドル
- 円建ての購入価格:4,459.5円
円安シナリオ:1ドル=170円の場合
米国通常債券
- 満期時の額面価値:100ドル×170円=17,000円
- 円建ての利益:17,000円-14,460円=2,540円
ゼロクーポン債
- 満期時の額面価値:100ドル×170円=17,000円
- 円建ての利益:17,000円-4,459.5円=12,540.5円
円高シナリオ:1ドル80円の場合
米国通常債券
- 満期時の額面価値100ドル×80円=8,000円
- 円建ての損失:8,000円-14,460円=-6,460円
ゼロクーポン債
- 満期時の額面価値:100ドル×80円=8,000円
- 円建ての利益:8,000円-4,459.5円=3,540.5円
その他リスク
米国債投資には為替リスク以外にも様々なリスクが存在します。以下に主なリスクを紹介します。
金利リスク
リスク内容:市場金利の変動により、債券の市場価値が変動します。特に金利が上昇すると債券の価値は下落します。
影響:満期まで保有する場合、償還時には額面金額が支払われるため市場価格の変動は直接的な損失にはなりませんが、途中で売却する場合には損失が発生する可能性があります。
信用リスク
リスクの内容:債券発行者が元本や利息の支払いを履行できないリスクです。米国債は米国政府が発行するため信用リスクは極めて低いとされていますが、絶対的なリスクがないわけではありません。
影響:信用リスクが現実化することはほとんどないと考えられますが、最悪の場合、元本の返済が滞る可能性があります。
流動性リスク
リスクの内容:市場で債券を売却する際に、希望する価格で売却できないリスクです。
影響:満期まで保有する前提では、流動性リスクは低くなりますが、急な資金需要が生じた場合には売却時に損失を被る可能性があります。
再投資リスク
リスクの内容:債券から得られる利息を再投資する際に、市場金利が低下していると再投資の利回りが低くなるリスクです。
影響:通常の米国債の場合、定期的に支払われる利息を再投資する際に、再投資の利回りが低くなる可能性があります。ゼロクーポン債では利息の再投資がなりため、リスクは存在しません。
インフレーションリスク
リスクの内容:インフレーションが進行すると、債券で得られる固定的な利息や元本の実質的な価値が目減りするリスクです。
影響:インフレーションが高進すると、受け取る元本や利息の実質的な購買力が低下します。長期の債券保有では特にこのリスクが大きくなります。
まとめ
長期間での米国債投資において、為替リスクや初期投資額を考慮すると、ゼロクーポン債の方が有利な場合があります。特に円安が進むと予測されるシナリオでは、ゼロクーポン債の方が大きな利益をもたらします。一方、円高シナリオでは、ゼロクーポン債でも利益が得られる可能性が高く、通常債よりもリスクが低いことが分かります。しかし、為替リスク以外にも金利リスク、信用リスク、流動性リスク、再投資リスク、インフレーションリスクといったリスクが存在するため、投資判断にはこれらを総合的に考慮することが重要です。